最近、起業することも珍しくなくなった。アイデアを実現するためにコンテストに応募し、投資家から資金を得て起業するケースも多い。しかし、いくら良いアイデアでも、起業のハードルが高いことは変わりない。では起業への情熱があるビジネスパーソンは、このハードルをどう超えればよいのか。その現実解の1つが「社内起業」だ。ここでは、中学生でソフトウェアの受託開発の個人事業を開始し、高校在学中の2006年にSYGを設立し、メディア事業やメーカー企業など全21社を擁するグループへと成長させ、ユニークな社内起業制度を整備したSYG 代表取締役 山本泰大 氏に、社内起業のメリット/デメリット、成功のポイントについて聞いた。

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SYG 代表取締役 山本泰大 氏

社内起業制度のメリットとデメリット

ビジネスパーソンが起業する、というのはそれほど珍しいことではなくなった。その一方で、新しいビジネスを立ち上げたい人が必ずしも会社を飛びださなければいけない、ということでもなくなってきた。「社内起業制度」を採用する企業が増えてきたからだ。 

こうした社内起業制度の活用には、メリットとデメリットがある。メリットは、経営に必要な資本や人材・リソースが手に入りやすく、事業を始める際に無駄な労力や負担が軽減され、一直線にやりたいことにまい進できる点だろう。 

また、起業活動中も会社から給与がもらえるため、スタートアップとは違って生活に困る心配もない。既存の自社ブランドを起業に活かせることもある。与信面も取引面でも優位に立てるだろう。 

一方、デメリットがないわけではない。 

SYG 代表取締役 山本泰大 氏は、「これは、どちらかというと企業側のリスクですが、社員が社内起業をすると、社内リソースを割くことになるため、失敗の損失やリスクも覚悟する必要があります。ただ、それでも社内起業を進めようとする企業は、新規事業の開拓や新たな収入源の確保、人材育成などの面において、トップの意識が高いと言えるでしょう」と語る。 

とはいえ、こういった企業は何か本業があり、副次的に新規事業を派生させる目的が多い。 

「こうした一般的な社内起業にはそれはそれで意味があります。しかし、価値のある新規事業を生み出すためには、志のある人材に徹底的に挑戦させ、最終的に分社化まで目指す制度のある企業の方が、野心的でアグレッシブな人材が縦横無尽に活躍できるでしょうね」(山本氏) 

では、社内起業にチャレンジしたいビジネスパーソンは、どうやって活躍できる組織を探せばよいのだろうか。

この記事の続き >>
・社内起業を成功に導くポイントは「失敗」に対する考え方
・年収1億円も?インセンティブ制度設計の仕方
・新卒入社社員が予算1億5,000万円で電子タバコ事業を立ち上げた
・2030年までに目指すこと

社内起業を成功に導く組織風土

山本氏は、「社内起業」の成功には企業カルチャーと失敗に対する考え方が重要だと説明する。

「何かにチャレンジするとき、失敗を許容してくれる環境が必要です。過去に事業の立ち上げに失敗しても、十分な根拠や提案があれば、何回でも挑戦できる環境が重要なのです。0から1を生み出すには失敗がつきものです。過去の失敗が次の成功につながるものです。論理的に考えて失敗し、そこから学び、最後に成功すればよいのです」(山本氏)

山本氏は、バッターボックスに立たずに、何もしないことを失敗だと考える。たとえ失敗しても、何度も打席に立ち続けられる意欲を持つ人材のほうが、新規事業の立ち上げには向いている。

SYGでもこれを実践している。SYGでは、0→1を行う専門職があり、彼らから良いアイデアの提案があれば、まず経営委員会で審査にかけられる。その際、事業の立案者は事業計画書を作り、3年先まで見越した「P/L(損益計算書)」と「CF(キャッシュフロー計算書)」を提出する。その意図を、山本氏は次のように説明する。

「P/L・CFの予測は必ずやってもらいます。どの変数が最も収益に対して弾力性があり、事業に影響を及ぼすのか分かり、その変数がKPIになるからです。これをベースに経営委員会が予算を承認していきます。ただし、KPIまで作ると、ほとんどの事業がうまくいかないことに気づきます。100案のうち5案ぐらいしか通過せず、予算をつけて成功するのは1案ぐらいになるのです」(山本氏)

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SYGの組織図。経営委員会で事業アイデアの審査が行われる。審査が通ると、立ち上げ人材には経営者と同じような権限が与えられ、グループ企業から必要な共通リソースを原価で調達できる。

年収1億円も射程圏内、連続起業を可能にするインセンティブ制度

失敗が多い社内起業に継続的に連続して挑戦するには、インセンティブやモチベーションも重要だ。SYGでは、基本的に社内の新規事業は分社化する。事業を立ち上げた人は、経営者と同様の強力な裁量権を持ち、分社化された子会社の人事権まで掌握する。つまり、事業に必要なコアの人材を社内起業家自身が社内外から集められるわけだ。

また、同社はグループ全体で事業を成功に導くバックアップ体制を敷いている。たとえばグループ企業のSYGパートナーズホールディングスからファイナンス支援、システム開発、マーケティング、営業といった共通で使えるリソースを原価で調達できる仕組みを用意している。ただし、リソースの活用には注意すべき点もある。

「社内にリソースがあるからといって、その延長線上で事業を考えないことが社内起業の原則です。最初から自社の強みや弱み、手元にあるリソースを考えると、本当にやりたいことが制限されてしまいます。最初に自分が何をしたいのかをしっかり考えることが本筋です。そのうえで社内のどのリソースが使えるのかを検討するのです。もしも社内にリソースがなければ、外部から取り寄せればよいのです」(山本氏)

同社では、新規事業を立ち上げ、最終的に事業に成功すると、独自のインセンティブ制度が適用される。これは、社員のモチベーションを高めるのに貢献する。

「自分で立ち上げた事業が成長し、毎月一定以上のフリーキャッシュフローを連続して生み出すと、そのフリーキャッシュフローが創業メンバーに利益還元される独自の制度があります。ある一定水準のキャッシュフローを生み出せば、年収1億円以上も現実的に稼げる制度設計になっています」(山本氏)

さらに何か事業を成功させてから、次に新規事業に移った場合でも、SYG社員でいる限り、過去に手掛けた事業からの還元がオーナーシップとして自身に残る。つまり事業立ち上げで生み出した利益が、立ち上げた事業が安定している限り、ずっと還元されるのだ。

「そのため、1つの事業を成功させてこれで終わりという話でなく、次の新規事業をやろうという気になってくれると思います。立ち上げた事業を安定化させたら、その事業を後任に任せて、次の主戦場である新事業に挑戦できる点も大きなポイントです」(山本氏)

新卒が予算1億5,000万円で事業の立ち上げに成功

SYGのグループ企業の1つにロックビルという企業があり、同社の電子タバコ「DR.VAPE」は業界で大ヒットしている。ロックビルはインターンから入った新卒社員が立ち上げた会社だ。彼はもともと山本氏から渡された化粧水の定期通販事業のノウハウを活かし、予算を1億5,000万円ほど使って、電子タバコ事業をゼロから立ち上げたというから驚きだ。

「このときは、すでに成功していた当社のグループ会社が後方支援に回り、初期の送客の流れを作りました。結果的にJカーブを描いて一気に売上を伸ばせたのです。この事業は、まだ1年も経っていませんが、今は月商1億円を超えています」(山本氏)

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大ヒットしている電子タバコ「DR.VAPE」。ゼロから事業を立ち上げたのは、インターンから入社した新卒入社社員だという。

ちなみに、この電子タバコ事業を立ち上げた新卒社員は、最初に英語学習サービスを始めて失敗を経験している。それでも何度も事業立ち上げにチャレンジし、最終的に成功を収めた。同社に明確な教育制度はないが、たくさんのお金を使って学ぶことが、最大の教育と考えているそうだ。今では、失敗の損失分もすべて回収できているという。

「いきなり『1億円を使ってください』と言われても、ほとんどの人はたぶん使えないと思います。一度もそんな金額を持ったことがないから、使い道が読めないのです。でも一回しっかりとロジカルに1億円を使ってみると、有効な活用方法が学べます。金額が大きくなるほど失敗の規模も大きくなるので、その学びも比例して大きくなると思います。だから、成功するまでチャレンジしてもらうのです」(山本氏)

社内起業家集団が2030年までに目指すもの

大胆なアプローチで多くの新規事業を成功させてきたSYGの次のミッションは「日本の顔」を作ることだという。

「皆さんご経験があるでしょうが、海外に行くと日本人で良かったと思う瞬間があります。それが今後も続くとよいのですが、寿司や和牛やオモテナシなど、今は当たり前の日本の代名詞が、今後消えそうだとも思っています。これは衝撃的なことで、何とか代名詞を維持する、あるいは、増やす活動をしたいと考えるようになりました」(山本氏)

こうしていろいろ考えた末に、同氏は「世界に誇れる日本の顔を作ること」をミッションに掲げたのだ。これは「日本の代名詞を作ること」と同じ意味だ。そこでSYGは「日本の顔」をゼロから作ったり、そういった顔を持つ企業に投融資したりして、総合商社として振る舞うことで、日本の顔を維持したいという。

「投融資する以上は、お金だけではなく、しっかりと優秀な人材も資金も送り、日本の顔を作るだけではなく、それを維持するためにも、営利企業として成長させていきます。いわば、事業投資を行う総合商社と同じことを行うという話です。これを2030年までに実現したい。おそらくオリパラ後に日本に大不況が来て、いろいろなモノが投げ売りされるでしょう。その中でしっかりと生き残るためにも、2020年の時点で十分な投資力が付けば、10年後には、総合商社になれると思っています」(山本氏)

世界に誇れる日本の「顔」を作り、それを育み、守り続けていく。このミッションを達成するために、共に汗をかき、一緒に成長の道を歩む仲間を、SYGは募集している。起業を目指すなら、一考の価値はあるだろう。

引用元
縦横無尽に動き回れるのは凄く良いかと思います。
むしろこれを進んで行えるのはかなりいいですね。
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