大阪中心部の商業施設「HEP FIVE」の吹き抜けアトリウムに、真っ赤なクジラが泳いでいます。全長20メートル。その巨大なオブジェに、訪れる人たちは思わず目を留めます。

そのオブジェに、今回取り上げる大洋製器工業の吊り金具が使われています。高品質で長期使用にも耐える同社製品のおかげで、見事にバランスを保ち、今日も安全に空中を泳いでいます。

これは目立った例ですが、吊り金具自体、普段はそんなに表に出ません。なくてはならぬものではあるのですが、どちらかと言えば、陰で安全を支える地味な存在と言えます。

しかし、そんなお堅い製品を作っていても、会社はおもろくいこう、というのが大洋製器工業社長の岡室富夫氏の考え方です。同社の多岐にわたるおもろい取り組みを紹介します。

経営方針は「おもろい会社」

大洋製器工業は、大阪市西区に本社を置き、従業員約190人。シャックル、リングなどの吊り金具やコンテナの固定金具などを製造・販売する会社です。

実は7年前にも1度取材する機会があり、そのユニークな活動を記事にした覚えがあります。特に興味を引かれたのが、こうした金物メーカーには珍しいキャラクター、「シャックル犬」でした。

岡室社長と筆者(筆者撮影)

シャックルというのは、ワイヤロープの先端などに連結するU字形の連結金具のことです。このリングに犬が吸い込まれた、という見立てで、同社の女子社員がデザインしました。無味乾燥な吊り金具が、独自のキャラクターによってずいぶんと身近なものになります。社内だけでなく取引先にも人気で、筆者も当時、その被り物を体験させてもらいました。岡室社長と並んで笑っている写真が残っています。

 

岡室社長(筆者撮影)

それからさらに明るい職場づくりが進化した、ということで今回新たに取材させてもらいました。4年前から「『おもろい会社』にしよう!」を経営方針に掲げたそうです。「大阪が本社の会社なので、大阪弁の“おもろい”です。とは言っても、おかしいだけ、笑ってしまう、のおもろいとは違います」。

岡室社長が考える「おもろい会社」になるには、大きく分けて2つの方向性があると言います。

2つの方向とは?

1.オンリー・ナンバーワン

シャックル犬(イラスト:大洋製器工業)

顧客の言われたとおりでなく、その要望を先読みすること。「ご用聞き」にとどまらず「ご用達(ようたし)」になり、その結果、仕事のやり方、取扱製品を唯一無二ものとし、他社との 「差異化」を図る。

2.選ばれ続ける存在

仕事の結果、顧客にリピーターやTAIYOファンになってもらうこと。選ばれる会社ではなく、選ばれ続ける存在となる。

こうすれば、自社製品をあちこちで見ることになり、社員もやりがいが出てイキイキと働くことができます。おのずと「おもろい会社」になるわけです。

そして「業界初」を積極的に発信していく姿勢も、同社の大きな特長です。昭和30年代、製品の写真や図を掲げたカタログを作成し、全国に配布。今で言う「カタログ販売」にいち早く取り組みました。

また前述の「シャックル犬」をWebサイトやラジオCMに積極的に登場させ、作業現場の安全啓発活動に努めています。

 

さらに、多点吊り計算アプリも開発しました。

D.C.吊る~ん(画像:大洋製器工業)

スマホに入れて、荷を持つワイヤロープの長さや交差角度などを入力すると、ワイヤロープにかかる荷重の概算が示されます。いずれも、業界初の試みとのことです。

どんどん“おもろく”なるために

総合メーカーですから基本は「モノづくり」ですが、それに「コトづくり」を加えようという動きが、近年加速しているように思えます。

「『おもろい会社』が目指すところは、自社製品を世に広めて安全に寄与し、社会に貢献して、社員とその家族、お取引先が幸せになることです」と岡室社長。言うは易く行うは難し、の会社方針ですが、一歩一歩、その目標に向かって進んでいる感じが伝わってきます。

おもろく、かつ安全に資する、という意味で特筆すべきなのが、同社のHP上で公開されている「玉掛けクイズ」です。なお「玉掛け」とは、クレーンなどに物を掛け外しする作業のこと。重量物を取り扱うので、ワイヤロープを掛ける時も外す時も、技能資格が必要です。

その作業についてのクイズは、たとえば図のような問題です。

「この玉掛けには危険があります。どこか考えてみてください」

クイズの問題(画像:大洋製器工業)

どうです、わかりますか?

 

解答は、問題画面をクリックすると出てきます。問題のような吊り角度では、用具の滑りや外れが考えられ、また破断して吊り荷が落下する恐れがあります。吊り荷と玉掛け用具の間に吊り天秤(図の黄色い部分)を使用して、吊り角度を60度以内にするのが正解、というわけです。

クイズの答え(画像:大洋製器工業)

この問題では単純化していますが、現場ではもっと複雑な作業が細心の注意で行われているのだろうと想像できます。素人に「玉掛け」作業の大変さを教えてくれる、実に教育的なクイズだと思いました。

井戸端会(写真:大洋製器工業)

こうした一般向けの動きのほか、社内では、「定時退社」の推進、「親睦会」、そして「スマイルカード」の発行や「井戸端会」などさまざまな運動が実践されています。スマイルカードは、一緒に働く同僚に対し日頃の感謝の気持ちを書き、ボードに掲示して職場のモラルアップにつなげます。井戸端会は、その名のとおり、上司・部下・同僚がお菓子を食べながら気楽に語り合い、相互理解を深める場です。共に全員参加が原則、というのが一体感を醸成しています。

社長がポスターでアピール

岡室社長も負けじと、自らモデルとなって「考えていこうや」「やってみようや」「提案していこうや」「やっていこうや」の4カットのポスターでアピールしています。

おもろいポスター(写真:大洋製器工業)

いつも柔和でおとなしい感じの社長さんが、こうした思い切った行動に出るあたりが、いかにも“なにわの企業”です。さらに昨年9月からは、全社員が写り込んだ「LOVE ♡ TAIYO」のポスターパネルも掲示。見える化を楽しく徹底させています。

もちろん楽しいばかりではありません。全員でヤル、早くヤル、できるまでヤルの「3ヤル主義」運動も展開しています。「社員の仕事意識が格段に変わってきました」と岡室社長。社内改革に確かな手応えを感じています。

大洋製器工業は今年1月に創業80周年を迎えました。船舶艤装用の金物メーカーとして発足し、戦後、陸上用の金物市場にビジネスを拡大、建築・土木・運輸など基幹産業の発展を支えてきました。今後も「おもろい会社」を目指し、楽しくかつ厳しく、「玉掛け」一筋に邁進していってほしいと思います。

 

引用元

https://toyokeizai.net/articles/-/248287

金具屋さんのお話ですね。

面白い会社が経営方針というのが良いですね。

社員に愛される会社ですね。

 

おすすめの記事
未分類
  モロッコの警察当局はこのほど、17歳の少女を2カ月にわたってレイプ・拷問したとして、未成年者を含む12人の男を逮捕した。 被害者のハディ...
企業
  企業口コミ・給与明細サイト「キャリコネ」は1月8日、「40代の年収が高い企業ランキング」を発表した。 本ランキングは、「キャリコネ」のユ...