先日、琉球大学で集中講義をしてきました。4日間で2単位分15コマの授業を行う、なかなかハードなスケジュールです。「経営情報論」というタイトルの講義で、グローバルビジネス、マネジメント、最新テクノロジー、セキュリティなどについてお話をしました。

「必ず質問すること」を条件に掲げているため、学生からは積極的に質問が出てきます。「もっと知りたい」という学生に答えるのは、とてもやりがいがあります。そんな学生や社会人の受講者の方々から時々出てくるキーワードが「起業」です。

「お金持ちになりたい」が目的で
起業して成功した人に会ったことがない

「今のアイディアを形にするために起業しようと考えている」
「就職と起業を天秤にかけて悩んでいる」
「就職するのはなんだかダサいと思う。起業家はキラキラしていてかっこいい」

いろんな意見があります。私自身は起業していませんので、起業家としての経験に基づくコメントはできません。ただ、何社か顧問を仰せつかっているので経営会議に参加したり、様々なスタートアップイベントでピッチコンテストの審査員をやったり、プレゼンテーションのメンタリングをしたりと、起業家の方々のすぐ横に寄り添う機会はサラリーマンとしては多い方ではないかと思います。

その中で感じるのは、本当に成功している起業家は生半可な覚悟の人はおらず、私利私欲で事業を始めて継続できている人もいない、ということです。どの起業家の方も、

「自分のこのアイディアで世の中を変えてやる」
「世界を良くするサービスを提供する」
「もっと楽しいゲームで人々を幸せにする」

といった精神でビジネスに取り組んでいます。

彼らは視点がとても高く、決して物事を狭い範囲で考えていません。もっと多くの人に対して価値を届けようと本気で思っている人たちが、ビジネスをどんどん成長させています。

私はスタートアップイベントにも数多く参加しているのですが、どこに行っても「本物の起業家」は人を惹きつけるし、多くのポジティブなパワーを周囲に提供していると感じています。そのような方々に起業のきっかけについて聞くと、たいていの場合「それしか思いつかなかった」「(自分がやりたいことを)やっている会社がないから自分で創るしかなかった」という回答が返ってきます。つまり、自分の行動や思考の着地点として起業があった、という感じです。

一方で、「何が目的でもいいからとにかく起業したくて、アイディアをいろいろ考えていた」というタイプの人は、少なくとも私の周りにはいません。ましてや「お金持ちになりたくて起業をすることにした」という人にも会ったことはありません。もしかしたら、内心ではそういうモチベーションがあるのかもしれませんが、それを前面に押し出して起業した人が知り合いにはいません。

そのマインドがダメなのかどうかは分かりませんが、少なくとも信頼できる仲間に囲まれて成功したり成長したりする起業家は、滅私の精神で仕事に取り組んで、自分が生み出すサービスやプロダクトのこと、そしてその先にいる顧客のことばかり考えているように思います。「そこまで自己を犠牲にするのか?」というくらいに必死に打ち込んでいる人々ばかりです。はっきり言って、割に合う仕事をしているようには見えません。でも、やり続けているのは、起業家には寝食を忘れて突き進んでしまう「パッション(情熱)」があるからでしょう。

パッションは、とにかく人を突き動かすガソリンになります。起業家の人たちは、パッションが外にあふれ出ているように見えます。今年に入ってから、もう10回近くスタートアップ関連のイベントに参加して、たくさんの起業家とお会いしましたが、例外なくパッションに満ち溢れていました。

パッションは燃料、
それがなければ起業しない方がいい

「起業したいのですが…」と私に相談に来る若者は少なくありません。私自身は起業家ではないので、どちらかといえば「年長者としての客観的な意見がほしい」という感じで質問してくれているのでしょう。

そういう若者に必ずする質問は、

「何をするのか、明確になっているか」
「事業のアイディアがあるとすれば、その事業のビジョンは何か」
「その事業は、どうやって人々を幸せにするのか」
「そのビジョンに向かって、何もかも投げ出してでも突き進むというパッションはあるか」

という4点です。

まず、一つ目の質問に答えられないのは、完全に起業が目的になっているパターンです。これではスタートを切ることすらできません。何をするか決まっていないのに、仲間を集めることはできないからです。

友人同士で「なにしよっかー」というレベルでワイワイやって楽しむ程度ならいいでしょう。でも、起業するとなったら、相当な覚悟が必要です。ましてや「就職が嫌だから起業する」というのでは、成功する確率は相当低いように思います。単純な消去法でうまくいくほど、起業は簡単ではありません。

二つ目の「ビジョン」は、仕事を手伝ってくれる仲間を見つけたり、あるいは仲間を増やしたりするためには不可欠です。起業すると決心して、かつ応援してくれる人が現れたとして、ビジョンが共有できていないと、それぞれ勝手なことを考えてしまったり、別の人に事業内容を伝えるときに全然違う説明をしてしまったりします。

また、進むべき方向が最初からずれていると、事業がある程度成長してきたときに、埋め切れない亀裂が発生するリスクを負います。

ちなみに、事業の詳細説明とビジョンは違います。ビジョンとは三つ目の質問でもある「どうやって人々を幸せにするか」に直結します。すべての事業は、何らかの形で社会貢献することが求められます。社会貢献とは誰かが何かしらの形で幸せになることを意味しています。

「どのように幸せを届けるのか」を言語化できていなければ、投資家の心を掴むことも、顧客の熱狂を得ることも難しいでしょう。逆に、言語化がしっかりとできていれば、賛同してくれる人たちをどんどん増やすことができます。

そして、最後の質問は「パッション」です。「もう何もかも忘れて打ち込んで、遊びにも行かず友達にも会わず、成功するまでずっとプライベートを犠牲にしてでもやりたいことか」を質問します。

「いや、そこまでは…」
「ライフワークバランスが…」

と思うなら、起業はやめておいた方がいいと思います。おそらく、途中で心が折れてしまい、最悪の場合には負の資産だけが残ってしまうかもしれません。「絶対にやり遂げる」という強い気持ちがあってそれを抑えきれないような状態なら、迷わず起業してしまってもいいでしょう。

起業しなくても人生は負けじゃない
就職したってチャレンジはできる

4つの質問と自分の気持ちを照らし合わせてみて、「あー、自分は起業に向いてないのか…」とがっかりした方もいるかもしれません。

でも、心配しないでください。起業できないことと人生の勝ち負けは無関係です。また、起業家と企業に属する人を比べて優劣をつけるのはナンセンスです。あくまでも人生における職業の選択であり、どちらがいいとか悪いとかいうものではないでしょう。

また、「就職したらつまらない仕事しかできない」というのも、ちょっと違うかなと私は感じます。起業家だってたくさんのつまらない書類仕事に追われることだってあるし、出たくもない会議に呼ばれてしまうこともあります。

企業に就職したらやりたいことができないという人もいますが、それは誰が決めたことなのでしょう。私は企業に所属していますが、自分で様々な工夫をしながら、そして会社の規約も理解しながら、かなり自由に働いています。もちろん制度面で恵まれているのは間違いありません。

「うちの会社では無理」というのであれば、変える努力をしてみてはいかがでしょうか。所属する組織のルールを変えようとして動けない人が、起業してどうやって世の中を変えるのでしょう。

「前例がない」「誰もやったことがない」なら、まさに起業家精神が試されます。それも会社員のままなら、報酬をもらいながらチャレンジができるわけです。生活の心配をすることなく、起業家マインドを発揮できるなんて最高ではないでしょうか。

私は様々なスタートアップ企業のお手伝いをさせてもらいながら、そこでの知見を会社にフィードバックできています。また、「圓窓」という屋号を作って、企業人としてではなく個人として活動することもできています。つまり、企業に所属しながら新しい働き方ができると身を持って経験しています。

「うちの会社では絶対やりたいことができない。でも、そもそもやりたいことがまだぼんやりしているから起業は不安だ…」という状態なら、迷わず転職しましょう。いっそ住む場所ごと変えてしまってもいいかもしれません。

できない理由を探していては前には進めません。今の時点でできることを最大限やり切りつつ、少しずつそのゴールのレベルを上げていくことで鍛えられます。変化を乗り切る成功体験を積んでいくうちに、情熱を思い切り傾けられるものが見つけられたなら、ぜひとも起業というアクションに踏み切ってみてください。

 

https://diamond.jp/articles/-/181226?page=4

 

起業について考えることがあります。何を核に持っているのか、そこの原点がいちばん大切かもしれませんね。

その核は儲からない場合がございませが、絶対にこれで成功してやる!これで生きていくんだ!という気持ちがいちばん大切なのかもしれません。

 

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