自分自身を疑う習慣を身につける

読書をしたいという意志があるならば、知識を蒸留して知恵と教養を会得し、一流になる準備はできているはずである。

知恵と教養はあるのに、洞察力がない。
そういう人が、読書以外で一流から超一流にジャンプアップする方法が他に何かあるのか。
1つだけ挙げるとしたら、それは「自分自身を疑う」ということだ。

誰しも、自分のやっていることは正しいと思いたい。

しかし耳を澄ましてみると、心のどこかから「これで本当にいいのか?」という囁き声がかすかに聞こえてくる。
通常はそうした囁き声を無視してしまうが、「これで本当にいいのか?」という良心の囁きに耳を傾けて自らを問い直すのは、一流が超一流へ脱皮する貴重なきっかけとなる。

自らを疑うのは難しい。

多くの人は、自分はつねに正しいという近視眼的なバイアスがかかり、眼鏡が曇っているからである。
自らを見つめ直すために坐禅を組んだり、冷たい滝に打たれたり、荒業をしたりする人もいる。

私はいずれも試したことがないから善し悪しを判定する立場にはないが、もっと簡単な方法がある。

近視眼的バイアスが避けられないときは、気の置けない友人に「私という人間に足りないところ、偏りがあるところはどこだと思う?」と素直に聞いてみるのだ。

「ビールでも奢るから、ちょっと時間をくれよ」と誘い、忌憚ない意見に耳を傾ける。
耳の痛いことを言ってくれるのが、本当の友人である。
そういう友人に恵まれたら、自らを見つめ直す絶好のチャンスが得られる。
友人の愛ある助言が得られて、自分がこれでいいと思っていたことが覆る体験をすると、自らの知識や知恵に対して懐疑的になれる。

批判的な読書と同じような効用が得られ、俯瞰して自らの足りないところを伸ばし、偏りを正そうと謙虚になれたら、血肉となった教養を洞察力として活かせるようになる可能性が高まる。

答えのないところに答えを見つけよ

私自身、自分を疑うきっかけとなる次のような体験がある。

大学卒業後、読売新聞社を経て入社した三菱商事を辞した後、私はボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の創業者ブルース・ヘンダーソンから、経営コンサルタントへとスカウトされてBCGに入った。

ブルースは非常にクセのある人物であり、BCGのアメリカ本社でも、幹部の多くは彼を煙たがっていた。
私にとってもヘンダーソンとの付き合いは骨の折れるものであり、心が疲れて何度も投げ出しそうになった。

ただ、ヘンダーソンという人間への好奇心が勝り、とくに彼の晩年は、BCG本社の幹部の誰よりも私が身近に接するようになっていた。
あるセミナーのために来日したヘンダーソンとのやり取りは、いまでも鮮烈に覚えている。
私たちは、ゴルフ場に隣接する高級ホテルに滞在していた。
ホテルのベッドで熟睡していた私は、早朝6時にヘンダーソンからの電話で叩き起こされた。

「散歩に行くから、K2(私のあだ名)もついてこい」
勝手な言い分だが、私の他に付き合う幹部はいない。

眠い目をこすりながら、誰もいないゴルフ場での散歩に嫌々付き合っていると、やがて彼は松林を歩きながら、足元に茂っている雑草を指差して問いかけた。
「K2、お前はどれが雑草で、どれが松の若木かわかるか?」
急にそう問いかけられても、私にわかるわけがない。
「わかりません」
そう答えると、ヘンダーソンは本気でムッとした。

「K2、お前はバカじゃないか。わからないのは、識別能力がないからだ。じゃあ、お前は5年後の世の中がどうなっているかもわからないのか?」
そんなことを尋たずねてくる。それもまた無謀な問いだと私には思えた。
「ええ、やはりわかりません」
素直にそう答える私に、彼は次のように畳み掛ける。
「お前は本当に愚おろか者だ。5年後の世の中もわからないような奴に、経営コンサルティングを頼むようなクライアントがいるとでも思っているのか?」

そう言われて、さすがに私もムッとして問い返した。
「では、お聞きします。そういうあなたには、5年後の世界が見えているのですか?」
するとヘンダーソンはこう答えた。
「もちろんわかる。よく考えてみろ。いま起こっている事柄で、5年前に影も形もなかったものがあると思うか? たとえ商品としては出回っていなくても、研究段階では10年ほど前から存在していたものがほとんどだ。ならば、5年後に起こることの芽はすべて、実はいま出ている。この雑草のなかで、どれが雑草のままで終わり、どれが松の木として成長するかが見分けられたら、5年後の世界が見通せるはずだ」

これは、答えのないところに答えを見つける能力を大切にせよという、ヘンダーソンならではの薫陶である。
経営コンサルタントの仕事の多くがそうだからだ。

雑草かどうかを見分ける能力が、世の中の未来を見極める能力につながるというのは、いささか乱暴に思えるかもしれない。
ヘンダーソンが言いたかったポイントは、「洞察力を持て」ということに尽きる。

雑草をただの草としてぼんやり眺めている人間と、そこに何らかの可能性を見つけようと洞察を試みる人間とでは、長い目で見ると大きな差が開く。
ヘンダーソンとのこの朝のやり取りは、私が「洞察力」を深く考えるとようになり、経営コンサルタントとして独り立ちするターニングポイントとなった。

ブルースは業界の革命児だったが、不思議なことに著書は驚くほど少ない。
経営コンサルタントが本に書いてあることを真に受け、そのまま実行していたら時代遅れになる恐れがある。
そういう危惧が心のどこかにあったのだろうか。

本に書いてあることは、つねに過去である。
過去からの学びは大事だが、経営コンサルタントは過去を学んだうえで、さらに未来を見通す仕事だ。
経営コンサルタントが学びを本からのみ得ようとすると、時代の最先端の潮流を読み切れない。

コンサルタントだけではない。
批判的な読書を心がけて洞察力を養おうとする際でも、本に書かれている内容は過去であるという事実は肝に銘じておきたい。

 

引用元

https://diamond.jp/articles/-/197003

コンサルタントってかなり優秀でなくては無理かと思っていましたが、しっかりと勉強していけば大丈夫かと思いましたね。

 

 

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