今日の製造業界では、スキルギャップが深刻化しています――米国の製造業者を対象としたデロイトの調査によると、今後10年間にわたり業界で新たに350万人分の雇用が創出される一方で、そのうちの200万人分のポジションが埋まらないままになると予想されています。

製造業界では、高いスキルを持ち高度な訓練を受けた人材への切迫したニーズがあります。独創的なアイデアを思いつき、複雑な問題を解決し、革新的な製品を生み出すことのできる人材がますます求められています。一方、そのような人材がこれから不足することは明らかになってきています。

こうした中、従業員の教育と能力開発の質を高めなければいけません。それぞれの従業員がどうやってキャリアアップを図るか、というモデルの見直しと、従業員のリテンション(離職防止)のための新しい戦略や制度を導入すれば、旧世代から新世代への知識継承を促すことにもつながります。

製造業が直面する3つの課題とは

企業側は、製造業界の旧来必要だったタイプの人材以外にも目を向け、職務要件の変化に適応していくことが必要です。でなければ、生産性の低下や、消費者のニーズに応えられない状況になりかねません。では、製造業界が直面する3つの課題と、人事担当者が講ずべき対策は何でしょうか。

1) スキルギャップの拡大

製造業界では活発に求人が行われていますが、学校での職業訓練の減少や、技術の進歩に教育の中身が追いついていないことなどが原因で、往々にして人材が、今の職務に必要なスキルを備えていないケースがあります。

製造業界で求職者と雇用主との仲介を行っているMFG jobsのマネジングパートナー、ロビン・シュワルツ氏によると、出社すること、時間を守ること、相手の感情を理解することといった基本的な雇用適性だけでなく、問題解決能力や数学的能力の不足も目立つようになっているといいます。

学校では、仕事に必要な必要最小限のスキルさえ教えてくれません。トレンドエキスパートで演説家のダニエル・レビン氏によると、「スキルギャップが生じる原因は、技術の進歩のスピードにトレーニングが追いついていないことにあります。製造業における技術の発展は目まぐるしく、従業員のスキルがそれについていけていないのです」。

トレーニングのアプローチをもう一度見直し、実地体験、最新のテクノロジーに触れる機会、研修制度などを提供するところから始めて、必要なスキルを持つ人材を育てなければなりません。

ロボットが人間の仕事を奪う?

2) オートメーション化と新しいテクノロジーへの対応

テクノロジーの目ざましい進歩とタスクの自動化が進んだことで、製造業界の人材には10年前とはまったく異なるスキルが求められるようになってきています。前出のレビン氏は「仕事を取り巻く環境を変えた最大の原因となっているのが、オートメーション化ではないでしょうか」と話します。

「ロボットが人間の仕事を奪うのではないかという議論をよく耳にしますが、現実はそんなに単純ではありません。短期的には、確かにロボットによって一部の仕事が奪われるものの、同時に新たな仕事も生まれます。それに伴い、新しいスキルセットが必要になってくるのです」

一般的には、ほとんどの若い人材はコンピュータやテクノロジーに精通しているとされていますが、必ずしもそうとは限りません。前出のシュワルツ氏は「実は、若い世代の従業員にはテクノロジーやコンピュータのスキルが驚くほど不足しています」と指摘しています。

このようなテクノロジースキルの欠如に対処するために、多くの雇用主がそれぞれ、実地研修制度を設け、従業員に新たなスキルを身に付けさせようとしています。さらには雇用戦略を見直し、「従来型」の製造業のバックグラウンドを持つ候補者から、必要なテクノロジースキルを備えた人材を採用する方向にシフトすることも必要です――「従来型」のスキルの多くは、実地で身に付けることができるものです。

学習にもテクノロジーの活用を

3) スキルのある人材の離職防止と教育

製造業者向けの業界紙、マニュファクチュリング・ネットの調査によると、製造業者の73%近くが、求人と従業員のリテンション(離職防止)が重要な課題であると回答しています。シュワルツ氏によると、「製造業界では人材の高齢化が進んでおり、知識が豊富で優秀な人材のリテンションは、今後も課題であり続けるでしょう」。

企業のミッションに従業員がどのように貢献しているのかを示し、新たなスキルを身に付ける機会を提供することは、リテンションに有効であることは明らかです。しかしここで人事担当者は、どうやって従業員を学習に参加させればいいのかという、もう1つの重要な課題に直面することになります。

ジョブシャドウイングやメンターシップなどの制度に加え、テクノロジーが有効な解決策になるとレビン氏は考えています。「最近目にして最も面白かったのは、拡張現実(AR)と人工知能(AI)を活用した教育です。AIの活用例では、仮想空間で課題を解き、パーソナライズ化された学習を自分のペースで行うことが可能です。製造業界は変わりつつあります。このようなトレンドを認識していない企業は競争に敗れることになるでしょう」とレビン氏は言います。

テクノロジーとオートメーション化が製造業において果たす役割は今後ますます重要度を増すことでしょう。このような業界の変化に対応できる、優秀で知識豊富な人材を育成するには、企業側も変化に適応しなければなりません。スキルギャップ解消のためにまず着手すべき3つは、必要なスキルセットの見直し、質の高い社員教育、AIなどのテクノロジーの有効活用です。

 

 

引用元

https://toyokeizai.net/articles/-/225909

製造業という言葉はなくなり、ロボット業に変わるのでは無いかと思ってます。

寂しい時代になってきてしまうかもしれないです。

 

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