社員が続けて辞めていく。そのうちの1人が、会社を訴えるらしい……。予期せぬ社員からの反逆に、ショックを受ける経営者は少なくない。労働問題を扱う島田直行弁護士は「労働事件を引き起こす経営者には、共通点がある」と言う。社員うんぬんより、自分がトラブルを引き寄せてしまう面もあるということか。あなたは、大丈夫だろうか――。
※写真はイメージです(写真=iStock.com/Ranta Images)

弁護士から見た、トラブルを呼び込むタイプとは

労働事件は、どこの企業でも起こりうる。だが、労働事件が繰り返し起きるとなると、話は別だ。こうした場合、やはり社長の姿勢に問題があることを疑う。私のこれまでの経験からすれば、危険な社長には5つほどの共通点がある。自分にそういった兆候がないか、確認してみていただきたい。

トラブる社長の共通点(1)自分の価値観に囚われた人

訴えらえても「法律はそうかもしれないが、当社の慣習は違う。これまでみんな賛同していた。法律はそんなに偉いのか」と立腹する社長がいた。私としては「法律は法律ですから」としか回答のしようがない。

そもそも日本の中小企業は、家族経営から発展したものが大半だろう。どうしても法律よりも、経験からできた慣習に依存しがちだ。慣習と法律の相違が労働トラブルの要因になっていることも否めない。いくら法廷で自社の歴史を熱く語られても、法律に反していれば違法である。法律がおかしいと考えるのであれば、それを変えていくほかない。

人は、とかく「信頼」という言葉を「法律」よりも重視する。「業界では、信頼がすべてですから契約書なんてありません」と平然に口にする人もいる。ハッキリ言えば、あなたの信頼は証拠にはならない。これは労働事件でも同じである。いくら慣習や信頼を述べたところで、意味はない。自分の価値観が法律に合っているのかを見直すべきだ。

トラブる社長の共通点(2)自己啓発に恋をした人

自己啓発本は、経営者にとって心の栄養剤のようなものだ。他人の成功体験を読むことで「自分にもできるはずだ」という強い動機づけにもなる。社長室に、山のように自己啓発本が飾っている人もいる。だが不思議なもので、自己啓発マニアの社長は、トラブルを抱え込むことが多い。抱え込むだけではなく、部下に丸投げして、自分は自己啓発セミナーに通っているケースもめずらしくない。

自己啓発マニアの人は、誰かの成功を目にすることで、自分の将来の成功ばかりに意識がいってしまう。新しい本を読むごとに「これを導入してみよう」と社員に話して取り入れようとする。社員は、「また社長のいつものことか」とあきれつつも付き合う。これに時間を取られてしまい、業務はさらに遅くなる。しかも社長の興味はすぐに冷め、再び新たな一手を求めてしまう。せっかく導入した制度も、あっという間に過去の遺物になる。

こんな興味本位の采配では、社員に徒労感ばかり広がってしまう。まばゆい未来をイメージする社長は、自分は楽しいかもしれないが、現場レベルではいい迷惑だ。理想を語る前に、社長としてやるべきことがある。それは、目の前の課題を解決することだ。それを忘れて、夢想家になってはならない。

トラブる社長の共通点(3)拡大しか眼中にない人

社長にとって、事業の拡大ほど興奮できるものはない。勢いがあるときには何でもうまくいくように感じるものだ。だからこそよりはやく、より大きくという前のめりの姿勢になってしまう。

もっとも事業の成長のスピードと人の成長のスピードは、必ずしもリンクしない。社員の個性や能力は千差万別だ。事業が大きくなるにつれ、社員の能力も同じように伸びていくことはない。こうなってくると、社長の意識は「人手が足りない。もっと採用しなければ」というものになりがちだ。次第に、今からいる社員より、新たに採用する社員のことばかりを口にするようになる。既存社員への興味が薄れていけば、当たり前だが離職率も高くなる。離職率が高くなれば、さらに人手不足で新しい人を求める。典型的な悪循環である。穴の開いたバケツにいくら水を入れても意味はない。事業が成長しているときこそ、立ち止まって既存社員の処遇を見直すべきだ。採用はそれから考えても遅くはない。

トラブる社長の共通点(4)絵面にこだわりすぎる人

誰だって自社のイメージをよく見せたいものだ。自社のイメージ作りにおいて、ホームページやSNSへの投稿は、効果的な手法であろう。社長の誕生日を社員がお祝いする写真や社員同士の課外活動の写真など、まぶしいほどに明るい写真がネットに掲載されている。社外の人からすれば「なんて素敵な会社だ。それに比べてうちの会社は……」と感じるかもしれない。

私の経験から言うと、イメージがいい投稿をしている会社ほど怪しい。イメージ戦略として、社員が無理にやらされているだけかもしれない。普通に暮らしていれば楽しいときもあれば、悲しいときもある。いろんな感情があるのが人間なのに、仕事だからといって悲しくても笑顔を強要されるとしたら、どういう気持ちになるだろう。その場では「仕事だから」と耐えられるかもしれないが、次第に忍耐の限界を超えてしまう。あくまで個人的な経験からだが、SNSの投稿が充実している企業ほど、離職率が高い傾向がある。

トラブる社長の共通点(5)業務の可視化をしていない人

社員とのコミュニケーションがうまい社長は、社員個人の業務量を的確に把握しているものだ。業務というのは、自ずと膨張する性質を有している。気がつけば、社長の想像していた業務と、実際に社員が負担していた業務量が乖離していることがめずらしくない。にもかかわらず、中小企業では、個人の業務量を可視化するという意識が希薄だ。また、たいていの社長は、特定の作業に要する負担を実際よりも過小評価してしまう。

社長は、優秀な社員に雑務を依頼しがちだ。優秀だからこそ器用に処理してくれるだろうと考え、本人の業務量などおかまいなしに次々に依頼してしまう。結果として、優秀な社員から会社を辞めていくことになる。

業務可視化の第一歩は、社員に自分が担っている仕事を書き出してもらうことだ。社員としても、書くことで改めて自分のスキルを見直すことができるだろう。実際に書き出されたものを眺めていると、発見や疑問があるはずだ。事実の共通認識があってこそ、社員との効果的な対話が成り立つ。「何か困っていることはない?」という抽象的な投げかけでは、社員としても、どう返事をすればいいのかわからないからだ。

以上、5つのトラブる社長の共通点は、実は社長にかぎったことではない。幹部を含め、マネジャーの誰しもが陥りやすいものだ。自分で「危険な兆候」に気が付くことができれば、未然に対策を打つこともできる。労働事件に発展しないよう、自分ごととして、今一度チェックしていただきたい。

 

 

引用元

https://president.jp/articles/-/26706

こういう社長いるかも知れないですね。

こういった方が上に居ると正直厳しく、社員も投げやりになってしまいますね。

 

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