女性・年下上司が珍しくない時代に

年功序列や終身雇用が社会基盤の前提だった時代は変わりつつあり、近年では年齢や性別にとらわれない実力主義も普及。「女性活躍」を推進する時勢もあり、女性上司や年下上司は珍しい事例ではなくなった感さえある。
私たちはこの変化に“適応”する準備ができているだろうか。

こうした中、人材総合サービス業のエン・ジャパン株式会社は、「女性上司・年下上司」に対する見解などを調べたアンケート調査の結果を公表した。

調査結果では、「女性か年下を上司に持った経験がある」という回答者は全体の約8割にのぼり、40代未満の回答に限定すると「(女性・年下)どちらもある」が32%、「女性上司だったことがある」が26%となり、半数以上が女性の上司を経験していることが分かった。

調査は10月1日~11月4日、エン・ジャパンが運営するミドル世代を対象とした転職サイト「ミドルの転職」を利用する35歳以上のユーザーを対象に実施。
インターネットを介したアンケート形式で「女性上司・年下上司」に対する意見を聞き、回答を得た562人の集計結果から結果を算出した。(11月20日発表)

女性・年下を上司に持ったことがある回答者に、上司との関係性を聞いた調査結果

そして、調査結果で浮き彫りとなったのは、女性・年下上司との関係性に「やりにくさ」を感じる人が一定数いたこと。

女性・年下を上司に持ったことがある回答者に上司との関係性を聞くと、約半数が「人による」と回答。「やりにくかった」と答える回答者は40代以上で全体の15%、40代未満で全体の19%にとどまったが、理由は「実力不足」「肩肘張っている態度」「経験不足」など、上司の素養や能力を疑うものが上位を占めた。

女性・年下上司との関係性が「スムーズだった」理由(左)女性・年下上司との関係性が「やりにくかった」理由(右)

政府は、2020年までに指導的地位の女性割合を30%まで引き上げることを目標に掲げており、女性上司は今後増えていくとみられる。
今回の調査結果のように、「やりにくさ」が生まれてしまう要因はどこにあるのか。抜擢された女性・年下上司はどう対応すれば良いのか。
「ミドルの転職」事業部長の天野博文さんに話を聞くと、女性活躍を推進する上での課題も見えてきた。

コミュニケーション不足につながる“遠慮”

「管理職と言えば『男性が多くて難しい』という固定観念はまだある」と話す天野さん

ーー今回のアンケート調査を行った理由は?

「ミドルの転職」は30代後半以降、企業では中堅層や幹部クラスの方が利用しています。この年齢層にとって女性・年下の上司は珍しい事例でしたが、女性活躍の推進や事業構造の変化、定年の引き上げなどで今後は一般化するはずです。そこで実際に働く方の考えや実情を知りたいと調査しました。
結果からは、性別や年齢に抵抗を感じる考え方は薄れていることが見て取れましたが、一方で上司との関係が「やりにくかった」とする回答も存在しました。

ーー女性・年下上司と部下の間にやりにくさが生まれてしまう要因は?

管理職となった時、新たな立場への不安や不慣れから職場での立ち振る舞いが上手くいかないことはあります。特に女性や年齢が若い方は部下に遠慮して戸惑うことがあり、コミュニケーション不足につながっていると考えられます。今回のアンケートでも「上司なのに遠慮しすぎていた」という回答がありました。

これまでの上司との違いから、部下が「偏見を持ってしまう」ケースもあるようです。アンケートの回答者には、自分の部下だった女性が他部署で出世して上司になった方もいて、女性は歓迎してくれたが、その回答者は敬語で話すべきか、部下としてどう振る舞うべきかしっくりいかなかったそうです。

女性は周囲との意思疎通に苦しむ可能性もあります。女性の管理職は増えていますが、全体比率ではまだ男性が多数を占めるのが現状です。個人差もありますがコミュニケーションにおいて性別の違いはハードルとなり、男性だらけの管理職の中に女性が配置されると周囲に相談しにくい状況が生まれてしまいます。

エン・ジャパンが行った「管理職への志望度調査」から抜粋。調査期間2018年10月29日~11月27日、有効回答数11,423名

弊社が別に行ったアンケート「管理職への志望度調査」では、男性が管理職に興味を示す一方、女性は後ろ向きな意見の比率が高くなりました。この結果は女性に意欲や能力がないということを意味しているのではありません。社会全般に「管理職は男性が務めるもの」という過去の固定観念があり、その中で働く女性上司の姿を見ている女性社員が「自分には難しいのではないか」と遠慮してしまう傾向があるのではないかと考えています。

「可能な範囲で仕事面と家庭面の情報共有を」

ーー女性上司が陥りがちなケースは?

仕事に一生懸命な方が管理職になると、家庭との両立に苦しむことがあります。抜擢された期待に応えようとパンクしたり、理想と現実とのギャップに苦慮して体調を崩すこともあります。周囲は会社での顔、家庭での顔それぞれ片方しか見えないので、ペースの乱れに気付きにくいです。

このような状況を防ぐためには、家族や同僚との率直なコミュニケーションを増やすことが必要です。仕事面では自分の許容範囲を超えているのか、もっとできるのか。家庭面では育児に追われているのか、家族の支えを得やすいのか。仕事面と家庭面の情報を共有できると、仕事の適切な分配にもつながるはずです。

ただ上昇志向が強い方だと「自分に対する要望度を下げてほしくない」と考える方もいて、上層部は配慮して業務負担を減らしたつもりが、本人は「自分への期待が下がった」と行き違いになることもあります。「もう無理!」という声も「物足りない!」という意見も率直に共有することが重要です。

ーー「上司の実力不足」を指摘する意見もあったが実情は?

本人の力不足も考えられますが、ロールモデルとして抜擢した会社側に女性・年下上司を支える環境や風土が整っていないことがあります。管理職は土日出勤が求められる会社で働いていた女性が、子どもが通う保育園が土日は閉園となることから、管理職を諦めざるを得なかった話を聞いたことがあります。
また時短勤務制度はあるが、育児などで早く帰ろうとすると他の管理職から「忙しいのにもう帰るの」と言わんばかりの圧力がかかるケースもあるそうです。

ーー円滑な職場環境を構築するためには?

自身が管理職なら、職場での信頼関係を構築することが重要です。立場に関係なく早く帰らなければならないこと、親の介護などで仕事を一時離脱しなければならないケースは出てきます。その際に周囲がサポートしようと思えるかは本人に信頼性があるかどうか。私たちは“信頼貯蓄”と呼んでいます。
自分がどのような状況で仕事をしているか周囲に話すことも大切です。連絡が難しい時間帯などを知っているかどうかで支援体制も変わってくるはずです。

部下の立場では、職場に固定化した人間関係、過去の関係を持ち込まないことが大切です。例えば過去に自分の部下だったといえ、部下が上司を呼び捨てにしたり大きな態度を取ると職場全体に波及します。日頃から固定化した人間関係を持たず、誰にでも敬意を持って接することが大切です。

会社側としては、男性女性を問わず社員の能力開発を支援する仕組みを整えることが大切です。時短勤務制度などの配慮は前提に、「管理職として求められる能力」や「産休から復帰後のビジョン」など、20代で目指すべき姿を人事制度で明確化しておくと社員も長期に活躍できるイメージを持ちやすいはずです。

女性社員には「キャリアの前倒し」のススメ

ロールモデルとして抜擢されたは良いが、職場での情報共有や会社の支援体制に不備があると板挟みとなる可能性があることは分かった。それでは管理職を目指したい女性はどうキャリアを形成すれば良いのか。エン・ジャパンでは「キャリアの前倒し」や勤務制度の改善を推進している。

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ーー管理職を目指す女性へのアドバイスは?

若手社員の頃から「キャリアの前倒し」を意識することです。女性の場合、初の出産や育児と管理職への挑戦を同時期に始めると板挟みになる可能性があります。業務負担が軽い若手時代に管理職や難しい仕事を経験することで、ライフステージの変化にも耐えられるはずです。ここで重要なのは、会社側が「キャリアの前倒し」を支援することです。若手に難しい仕事を任せるのは不安もありますが、人材育成の面などで会社側にもメリットがあります。

出産や育児などのライフイベントによる変化を乗り越えられるよう、会社の制度を利用することも大切です。弊社では、育児・介護を行う職員を対象とした時短勤務制度の見直しを2017年春に行い、勤務形態を一般的な時短勤務と高待遇時短勤務に分けました。高待遇時短勤務は一定の人事評価に達した“信頼貯蓄”のある社員が選択でき、労働時間を短縮しつつもフルタイムと同じ期待感とミッション(役職)を与え、フルタイムに近い給与を支給しています。

育児や介護などの“時間的制約”が発生する前にキャリアを磨いてほしいと始めましたが、高待遇時短勤務の方は「成果を求めている」、時短勤務の方は「今はプライベートを大事にしたい」と互いに共通認識できるため、会社側としてもマネジメントしやすいです。社会一般的に、時短勤務者には負担の軽い仕事を任せる傾向があり、求める要望も低くなりがちでした。高待遇時短勤務という選択肢を設けることで、女性が望むキャリア形成の支援にもつながります。

ーー女性上司が増えるためには?

女性は自分の業績や実力を過小評価し、管理職に挑戦できる機会にも「自分はまだ早い」と辞退する傾向があると思います。女性に甘くするということではなく、期待をかけて成長を促すため、管理職に挑戦できるよう、上司をはじめとする周囲の積極的な後押しが求められます。

海外では子どもをベビーシッターに預け、家事代行サービスを利用することは普通ですが、国内では女性が子どもを育て、家事を担う意識が残っています。女性活躍を支援するサービスの充実や、そうした助けを借りても良いという意識変化も必要ではないでしょうか。これは男性の育休取得に対する理解も同様です。

今後は女性管理職の増加とともに、女性が働きやすい環境が増えると思います。ロールモデルとなる方が増えればチャレンジしやすい風土となり、既婚の場合は子育てや家庭との両立、独身なら女性としてのキャリア形成など、状況に応じた相談がしやすい環境が整っていくのではないかと思います。

女性・年下上司が今後増えるかどうかの回答(左)とその理由(右)

今回のアンケートでは、女性・年下上司が今後増えると思うか、という調査も行い大多数が増加を予想した。
女性管理職が当たり前になってくれば、ロールモデルとなる人も増えてチャレンジしやすい風土になるという好循環が生まれるということだが、「女性活躍」を掲げるだけでは部下との関係性など上手くいかない一面も見えてきた。
女性を抜擢した側のサポート体制、若手の女性社員が管理職を目指したいと思える環境の充実がまずは必要なのだろう。

 

引用元

https://www.fnn.jp/posts/00403160HDK

やりづらい気持ちはあるかもしれませんが、仕事なのでしっかり円滑になれるようにしていきたいですね。

男性はプライドが高いのので問題はあるのかもしれないですね。

 

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