どんな会社にも存在する「企業理念」や「事業ドメイン」ですが、これらがブレると経営が途端におかしくなるとするのは、無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』の著者・梅本泰則さん。梅本さんはアマゾンやマクドナルド、大塚家具等を例にあげ、理念やドメインの扱い次第で顧客獲得率や業績に大きな差がでてくると記しています。
「経営」で、変えてはいけないもの
私のセミナーや講演では「経営とは何か?」という質問をよくします。皆さん、それぞれの答えが返ってきます。
- 企業を継続させること
- 時の流れを見て対応すること
- 自社の資源を最大限活用すること
- 利益を生むこと
- 顧客を創造すること
すばらしいですね。あなたは、どう答えますか。
実は、世の先生方も、経営についていろいろな定義をしています。書店に並んでいる経営の本を読んでも、その意見はバラバラです。つまり、「経営」にはこれといった決まった定義はありません。ですから、「経営とは何か?」という問への答えは正解がないのです。いえ、どれもが正解だと言ってもいいでしょう。
では、そもそも「経営」という言葉は誰が生み出したのでしょう。ネットで調べてもなかなか分かりませんが、明治の時代に福沢諭吉あたりが「マネジメント」を「経営」と訳したのかもしれません。いずれにしても、「経営」という言葉が盛んに使われるようになったのは戦後のことではないかと思うのです。
一方、「経営」には面白い説があります。中国の古典に「経営」という言葉が登場しているのです。その古典は「詩経」。紀元前8世紀の周の時代の詩を集めたものです。編集したのは、あの「孔子」だと言われています。その詩経の中に
之(これ)を経し之を営す
という言葉が出てきます。これは、祭礼用の建築物を作るときの手順を述べたものだそうです。簡単に言えば「経」とは「建物の柱の位置を決めること」で「営」とは「全体の大きさや範囲を決めること」。まさに現代の「経営」にぴったりと当てはまります。
つまり、「経」は「経営理念」にあたり、「営」は「事業ドメイン」に当たるのです。誰が引っ張ってきたのかは知りませんが、「経営」とは、実にうまい言葉ではありませんか。そして、「経=経営理念」も「営=事業ドメイン」も、ブレたら経営がおかしくなります。
変えてはいけないもの
経営理念の話は、ここでもよくします。絶対に変えてはいけないものです。
経営理念は、企業のあり方としての「柱」となります。ですから、多くの企業は「経営理念」を持っています。歴史のある企業ばかりではありません。最近のIT企業にも、立派な理念があります。
例えば、
-
アマゾン
「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」 -
フェイスブック
「誰もが情報を共有できる、オープンでつながりのある世界を実現する」 -
楽天
「インターネット・サービスを通じて、人々と社会を”エンパワーメント”する」 -
ヤフー
「情報技術で人々の生活と社会をアップデートする」
といったように。
それに加えて、「ミッション」とか「ビジョン」とか「コアバリュー」といった、理念を補うものを唱っている企業もあります。そうでなければ、先のIT企業にしたって、これほどまでに大きく成長することはありません。
そして、理念と同じく「事業ドメイン」も大切です。よほどのことがない限り、これも変えてはいけません。そして、最近ドメインを変えたために苦境に陥っている会社があります。
事業ドメイン
それは大塚家具です。
まず、「事業ドメイン」とは何でしょうか。以前にもお伝えしたかもしれませんが、事業ドメインとは「誰に、何を、どうやって」提供するかという大きな方針のことです。例えば、マクドナルドは
- ティーンエージャーから小さい子供を持つ夫婦(誰に)
- 早く、安く食べたいというニーズ(何を)
- 駅前一等地の店舗で店内作業マニュアル化(どうやって)
提供していることがわかります。それに対してモスバーガーのドメインは、
- 比較的年齢の高い層(誰に)
- ゆっくり、おいしく食べたいというニーズ(何を)
- 少し奥まった二等地の店舗で、注文後手作りで
提供することです。同じ業種ですが、お互いのドメインが違うので、共存できます。このドメインを変えてしまうと大変なことになってしまうのです。
- 高所得者層(誰に)
- 高級家具(何を)
- きめ細かい接客サービスで(どうやって)
販売するというものです。ところが、社長が交代したらこんなドメインになりました。
- ファミリー層(誰に)
- ファッショナブルで値ごろ感のある家具(何を)
- 気軽に見て回れるセミセルフ販売(どうやって)
ここまで大きく変わってしまうと、経営がブレます。というか、もう以前とは別の会社になってしまったのです。新社長は「大塚家具」の名前も変えるべきでした。名前を変えただけで成功するわけではありませんが、「経」も「営」も新しくするチャンスにはなります。
私は部外者として外から見ているだけなので、社内事情はわかりません。しかし、変えてはいけないものを変えてしまったことは分かります。事業ドメインを変えるならば、従業員との徹底した話し合いが必要です。その作業を省いてしまったのではないでしょうか。
あなたのお店にも参考になる事例です。事業ドメインがブレていないか、もう一度確認しましょう。
引用元
https://www.mag2.com/p/news/368583
なんでも芯がぶれたらいけないんですね。
勉強になります。