連休明けだ。会社に行きたくない人も多いだろう。会社に入ってはみたものの、思っていたような場所ではなかったと失望したり、想像していなかったつらさに会社を辞めたいと思ったりしている人もいるかもしれない。

ただし、あなたがもし大企業に勤めているなら、「退職願」を書くのはいったん待ってほしい。大企業に勤めていることのメリットを改めて考えてから辞めても遅くはないからだ。

一般的なメリットとしてよくいわれるのは、安定している、待遇が良い、福利厚生などが充実している、給料が高い、(親の安心のために生きているわけではないが)親が安心する、などであろう。中小企業に勤めるメリットは業務が細分化されていない分、与えられる裁量が大きい、意思決定のスピードが速い、などであろうか。

しかし、長年コンサルタントとして、さまざまな企業やその社員と付き合ってきた経験から言わせてもらうと、いくつかの点で大企業に勤めていることには相当のメリットがあると言わざるを得ない。

【メリット1】
ちょっとした希少性があるだけで、
先端的なプロジェクトも経験できる

まず、「機会の獲得」と「経験の蓄積」という点で圧倒的に有利である。

最低要件を満たし、何らかの希少性があれば、その希少性の部分で人は抜擢される。まず、大企業にいるだけで、最低限の仕事ができるという保証付きとみなされる(最低要件)。さらに、ある分野に一日の長があれば(希少性)、日本有数というレベルでなくても、その分野の先端的なプロジェクトなどに呼ばれる機会があり、そこで経験を積むことができる。そして、呼ばれた先でつつがなく成果を出せれば、その実績が次の機会への切符となり、順回転に乗っていけるのである。

希少性、一日の長といっても、大した経験はいらない。学生時代にミャンマーに3ヵ月滞在したことがある、転勤で支社にいたことがあり、土地勘があるとか、その程度でいいのだ。大企業にはすでにノウハウが蓄積されている。政府の肝いりのプロジェクトなどは、まず大きな会社に声がかかって、その中で個人が選抜される。もちろん世界的なその道の専門家ということなら、個人や中小企業にいてもチャンスはあるだろうが、個人や中小企業は最初から相手にされないのが普通である。

もちろんニッチでトップ技術を持つ企業にいれば、同等の経験が積めるだろう。しかし、ニッチトップはそもそも絶対数が少ない。

 

【メリット2】
「文書作成術」など、良い仕事の習慣が身に付く

大企業で働くと、仕事を前に進めていくための「基本的な技術」が身に付くという点も大きい。

例えば、文書作成術。これは私の経験上、大企業と中堅、中小企業の社員では雲泥の差がある。大企業では、レポートなどの作成時に、必要な情報をきちんと伝える文書作成技術を叩き込まれる。

目的、達成したいゴール、課題を適切に切り取って、それが何かを明確にする。どのような対策が考えられ、その効果はどうであるかについて、必要十分にまとめる。必要最小限の情報を盛り込み、端的に、多義性を持たない、誰もが誤解しない文章に仕立てるというものである。これは常に先輩に報告書を出して、ダメ出しをくらうといった形で訓練されなければ、そうそう身に付かないものだ。

もちろん中小企業でも、もともと個人的にそういう能力に長けている人もいるし、大企業などから転職した上司が文書作成の重要性を心得ていて、訓練する場合もある。

【メリット3】
大人数をまとめて動かす経験ができる

あるいは、「起案~合意形成~役割分担=調整・変更」といった一連のプロセスを仕切る技術も、大企業でなければなかなか学ぶ機会がないものだ。

中堅・中小企業の社員であっても、5人の人をまとめてプロジェクトを進めることに、さほど苦労は伴わないだろう。しかし50人となると、5人を動かすのと同じ方法というわけにはいかない。小集団に分け、期限を設けて、プロセスを組まなければならない。まして500人、1000人以上のプロジェクトなどは、とても初めてやってできるというものではない。

一方の大企業では、いや応なく大人数を仕切るという立場に立たされるため、中堅・中小企業の社員よりも経験の面で圧倒的に有利なのだ。

 

合意形成の過程では、タイプや役割を意識した上で、その人たちをどのように機能させるか、という対処が必要だ。人は何人か集まると、なんでもかんでも反対する人、その件にだけ反対する人、どうでもいいと思っている人、賛成する人などに分かれるものだ。これを「人数が多くまとまらないので、進められません」では通らない。

何にでも反対する人は、とにかく仕事をしたくないだけなので、無視して見切ればよい。その件についてだけ反対する人は、強硬でも、原因を見極めて対処すればいい。どうでもいい人は、しょせん日和見で、会議の流れ次第で意見を変えるため、会議の流れを工夫すればよい。賛成の人は、その影響力を周りに行使してもらうべく、うまく取り込んでインフルエンサーとして活躍してもらう。

このような役割分担は、一般化すれば、授権範囲の適切な判断、影響範囲の正確な見積もり、事前警告の発信、事後対処とまとめることができる。これらも場数を踏むことでその目が養われ、適切な対応ができるようになる。

よく、大企業の歯車にはなりたくないという言い方をする人がいるが、人間が一人で生きられない以上、誰しも社会の歯車なのだ。チームプレーをしながらその中で個人プレーをする、個人プレーをしながらそれがチームプレーになっているといったように、チームプレーと個人プレーを上手に配合しながら、組織や社会の中で、そのときどきの役割を果たし、機能していくのが生きていくことである。大規模組織活動も、チームプレーであり、かつ個人プレーの積み重ね、総体なのだ。

【メリット4】
「異動」ができることで、
自分の適性を知り、人間関係や思考も多様に

「腰掛け管理職」のような、1、2年おきといった極めて短い期間で異動して、自部門の事業や人を育てることに関心のない管理職の在り方には私は反対なのだが、異動自体には大きな意義がある。人は異動によってはじめて、自分の適性を知ることもある。経験する部署が増えれば、それだけ知っている人や取引先の数も増え、人的ネットワークの多様性が生まれる。今までと違った部署の違った人の考え方に触れることで、思考の多様性も生まれる。

 

あるいは、今の仕事と違うことをしてみたいと思って転職するには大きなリスクが伴うが、異動によって、最小限のリスクで、他分野で自分の力を試すことができる。

また、中小企業ではどんなに反りの合わない上司や同僚であろうと、同じ部署に一生一緒にいるということもあり得るし、異動でその人と関係がなくなるということはないが、大企業であれば、3年も我慢すれば、上司や周囲は変わるものである。

【メリット5】
大企業の管理職や役員という立場が、
「人間的に成長」させてくれる

大企業という影響範囲の大きさからくる、視野の拡大や思考の深み、そしてそれによる人間的な成長も大きなメリットだ。

地位は人を育てる。一般的に大企業の部長や課長にとって、自社商品やサービスが関係するステークホルダーの範囲や地域はとても広い。その地位にあると、単なる自分の身の振り方や自社の損得計算にとどまらず、あるアクションについての、歴史的、文化的考察、未来への影響、人々の生活への配慮、社員の人生などを考えざるを得ないものだ。

自分の会社や商品、自分の決断が与える影響力を知ると、それを「背負おう」という人は思慮深くなる。たくさんの選択肢があり、それを社内政治や自身の進退や、目先の業績だけを勘案して単に処理するか、それとも「背負うか」。背負う人には、必ずしも出世とイコールではないが、人間的な成長がある。私のような一匹おおかみはときおり、それに対してある種のジェラシーすら覚える。

大企業に入ったばかりで、地位が低いときは、意外に大したことがないという人はたくさんいる。しかし、地位が上がるにつれ、影響範囲についてどうしたらいいかを真面目に考える機会が増え、背負うものが増え、覚悟ができていく。

優秀な人に教えを乞い、一緒に仕事をする相手も役員、コンサル、弁護士など一流の人になる。その人たちから良い影響を受け、良いものを吸収し、思考に深みを加え、部長以上になると加速度的に立派になる人、いつの間にかすごい人になっているという例を数多く見てきた。そうした人で尊敬できる人がたくさんいる。こういう形の成長や成熟は、大企業という環境の中でなければなかなか実現できないものだ。

 

いってみれば、大企業には、経験するものをなんでも飲み込んで、吸収していく「うわばみ君」、いわば「課長・島耕作」のような人がいるのだ。もちろんそれはただラッキーの連続だけで高い地位に上り詰めた人と紙一重でもあるのだが。

余談だが、100年以上の歴史を持つ「宝塚歌劇」では、トップスター(トップ)が劇団の全てを背負うシステムになっている。演目、レビュー、どれをとっても、トップがひたすら脚光を浴びるシナリオ、構成になっている。

もちろんトップに選ばれるまでに、トップ候補として、それなりの実力を持ち、重要な役割を担ってきた人たちではあるのだが、いざトップになった途端に、さらに人が違ったように立派になり、歴然とその「アウラ(オーラ)」が増すということがある。本人の意識や努力もあるし、劇団が総力でその人を「輝かせる」ために傾注するからでもあるが、大企業で重要な地位に就くことに通じるような「多くのものを背負う地位が人をつくり、育てる」典型例といっていいだろう。

大企業の良い仕事の習慣は、
今の時代も捨てたものではない

ともあれ、時代は変わり、大企業で身に付けられるような「良い仕事の習慣」が必ずしも、全ての仕事や領域において、良い習慣でなくなってきている部分もある。また、アプリ開発などのように、ちょっとしたアイデアを最先端の技術と結び付ければ、個人でも利益率が高い事業を起こし、脚光を浴びることもある。大企業に属さずとも、才能が発見される時代になってきているともいえる。

しかし、大人数で仕事をする機会が皆無になるわけではない。そういう能力というのは必ず役立つ局面があり、将来的に比較優位として生かせる可能性が高い。大企業に勤めて、これまで述べてきたような各種の技能を身に付けるメリットを享受するという道も、まだまだ捨てたものではないと思うのだ。

 

引用元

https://diamond.jp/articles/-/168697

大企業もベンチャーも魅力がありますね。どっちに行くかはその人次第ですね。

 

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